先日、公開から1週間遅れにて映画「8番出口」を観てきました。
率直な感想としてはめちゃくちゃ面白かったです!(個人的)
ゲームは未履修なのでゲームとのリンク性などの面白さは分からずとも、違った面から観てストーリー性が素敵でした。(むしろゲームをやったこと無いが故の面白さだった可能性はある。)
本編の感想を述べる前に少々備忘録を。(飛ばしたい方はこちらをクリックで考察から読めます。)
そもそもなぜ足を運べたのが1週間後だったのかと言うと
期待をしていた初日舞台挨拶のライブビューイングはなく、、大ヒット舞台挨拶のライブビューイングでもあるだろうかと淡い期待を持ち続け。
結局1週間経っても特にお知らせがなかったのでこのタイミングになりました。

推しの子に引き続きオフィスにの限定ムビチケを買い損ね通常のもの(;_;)
これはこれで黄色基調で良き(開き直り)
基本的に映画鑑賞時にはポップコーンを購入します。
TOHOシネマズのシネマイクポップコーンに新作?(復活?)でブラックペッパー味が出ていたので初挑戦。

これは、、辛いものが苦手な人は厳しいかも。同伴していた母はむせていました(笑)
ディズニーに売っているブラックペッパー味とほぼ同じなので味は美味しいです。しかし、映画には不向きの人がいることは確実、、(笑)
さて、ここからは感想や考察を並べていきますので、まだ観ていない方やネタバレをくらいたくない方は戻るボタンをお願いします。
そもそもホラー映画なのか
結論から言うと、私は8番出口をホラー映画だとは感じなかった。
無意識のうちにストーリーや登場人物の感情にスポットを当てていたからだろう。
私がこの映画を観るにあたって知っていた内容は
・ホラー (割と直前に知った)
・異変を探す (特報映像から)
この2点のみしか知らなかった。
ホラー映画は苦手だが、ニノだしムビチケ購入済みだったためほぼ強制鑑賞(笑)
身構えながらも異変を探さなければと、流れる景色に目が忙しい。
なんで主人公じゃなくお前が探してんねん。って話ですが。笑
まぁそんなこと冒頭10分程度で忘れ、作品に引き込まれた。
なんといってもサウンド効果がすごく、より作品の内容が引き立っている。
サントラやBGMがほとんど使われていないため、作品の中にいるかのような錯覚が起こるのだ。
しかし、物語の節目となる重要なシーンでは大きめなサウンドでその時の感情を彷彿とさせる音楽が流れる。
通常時が無音なことで不気味さがあり、突発的な大きな音でびっくりする場面があることや、
主人公が得体の知れないもの達から逃げたり、血や急なアクション、想像できない展開にハラハラ感はあるのでホラーと言えばホラー映画だろう。
つまり、この映画は
・原作ゲームが好きな人
・ホラー映画として楽しみたい人
・ストーリー性を重視して鑑賞したい人
どの観点からしても楽しめる映画であり、さらに観る角度によって全く違った感想になるのであろう。
私はストーリー性を重視していたので、そのような観点から感想と考察を述べていこうと思う。
ストーリーの異変
ゲームの8番出口は、同じ空間をループしながら異変を見つけて8番出口から脱出するという至ってシンプルなもの。
では、ストーリーの異変とは何か。
冒頭、電車に乗っている”迷う男”(二宮和也さん・以下迷う男)。冴えない毎日を送りながら派遣として働く成人男性だ。
派遣先に向かっている最中、その満員電車で赤ちゃんが泣き出す。困惑するその母親。
その2人の前に立っていた1人の男が「うるさい、どうにかしろ!」と怒鳴り散らす。
迷う男はノイキャンイヤホンを1度外し状況を把握したが、何も行動することなくまたそっと1人の世界に戻る。
そう、これこそがストーリーにおいての異変なのだ。
何も悪くない赤子とその母に向かって怒鳴り散らす男に、誰もなにもしない。これは現代社会においての問題でもある。
この最初のストーリーの異変に気付けなかった迷う男は、地下通路を無限ループし8番出口を目指すこととなる。
地下通路は迷う男の葛藤か
冒頭シーンで迷う男が電車に乗っていると”ある女”(小松菜奈さん・以下ある女)から電話。
別れる寸前の彼女のような存在らしい。
電話に出ると「妊娠した。」と産婦人科から報告。
迷う男はそれを聞いてパニック状態になり、持病であろう喘息を引き起こしてしまう。
前述したように、男は覇気もない冴えない男だ。
自分なんかが父親になれるはずがない、しかし彼女に堕してほしいとも言えない、育てられる根拠もなく産んでほしいとも言えない。
そんな感情がぐるぐるし、気づけば8番出口の地下通路へ迷いこむ。
最初に出てきたスマホに表示された時間と、最後のシーンで電車に乗るホームの時間は数分しか経っていない。
そのことから8番出口での出来事は男が父親になれるかの葛藤を描いた感情シーンであり、実際に起こっていたわけではないことが分かる。
父親になるか堕胎するか
8番出口では無限ループという、我々も日常感じている毎日同じことの繰り返しのようなテーマもあるだろう。
その中で、迷う男にとっては自分が父親になれるのか考えても答えが出ない無限ループに陥っている状態を表していると思われる。
迷い込んだ序盤、天井から大量の血やロッカーから赤ちゃんの鳴き声。
これらはこのまま無責任に産んで育てられなくなり育児放棄したり、堕胎を選択する恐怖を表しているのだろう。
この後は順調に進むが、目の前に先ほど電話をしていたある女が現れ、その女と電話をしている迷う男。
迷う男は「早くここから出て、向かうから待ってて。」と告げ、電話を切る。
女からの電話は異変だったが、そのまま進む迷う男。せっかく順調に進んでいたがまた振り出しに。
男は絶望し、吐く。
しかし、彼女との電話で絶対にここから出ると強い意志に切り替わり、まるで別人になったかのように覇気がある男になったのだ。ここから男の喘息症状は消える。
おじさん と 少年
迷う男が地下通路をループしている際、同じタイミングで現れる”歩く男”ことおじさんがいる。(以下おじさん)
じつはこのおじさんも迷う男と同じように地下通路に迷い込み、8番出口を目指していた人間だった。
おじさんはループ中に迷子の少年と出会う。
その少年と出口に向かおうと一緒に異変を探し始める。
少年は口を開かなかったが、子どもながらの鋭い観察眼で小さな異変すら見つけて立ち止まっていた。
おじさんは子どもなんかの言動に耳を傾けず、自分の思うように動かない少年にイライラしながら無理やり引っ張り進む。
もちろんまた0番に逆戻り。
絶望しながらまた進むと、通路の先には8番出口と書かれた階段が現れた。
これは明らかな異変だが、おじさんは駆けあがろうとする。
少年はおじさんの腕を引っ張り戻そうとするが、振り払われる。
おじさんは可哀想な子どもを助けようとしたという偽善者ぶりを放ちながらも少年を置いて階段を駆け上がり、残念ながら8番出口の住人(?)になってしまった。(これはホラー。笑)
これは子どもの言葉に耳を傾けない自分勝手な大人は、いつか痛い目をみるという世間への皮肉でもあると思う。
ストーリー的には、迷う男との対比としてのシーンだったかな。
迷う男 と 少年
男が8番出口を目指しまた歩き始めると、先ほどおじさんと居た少年が現れる。
異変だと思い引き返すも、出口の数字は進まない。
それに気が付き少年と共に8番出口を目指し始める。
ちなみにおじさんが手を振り払った際に、少年にはおでこに傷ができている。
迷う男と少年が出会ったとき、既に少年には傷があることから時系列が分かる。
順調に進んでいくと、”ある女”が通路に現れる。
それを見た少年は「ママ!」と叫び近寄ろうとするが、迷う男はそれを引き止める。
少年はある女の子供だったのだ。すなわち迷う男の子供でもあるが、双方その認識は最後までなく「ママじゃないよ」となんとか少年を抱きかかえて通路を戻る。
少年はだんだん迷う男に心を開くようになり、これを機に口を開くようになる。
このとき迷う男と少年の会話に「お父さんは?」「居ない。」「俺と一緒だ。」という会話があることから、この地下通路に迷い込まなければ迷う男は父親になっていなかったことが分かる。
そして迷う男にも父親がいなかったことから、自分が父親としてどう振る舞えばいいのかも分からないことが葛藤の要因の1つになったかもしれない。
父性の芽生え始め
少年は迷う男と一緒に異変を探し、2人の関係は随分近づいていた。
そんなとき進み始めると突然通路が真っ暗に。
迷う男は急いでスマホのライトを使い辺りを照らす。
血とともにそこに現れたのは毛がない大きめのネズミのような、不気味な動物だった。
その動物の体の側面には、目や口がパーツとなって1つずつ張り付いている。
ここはさすがにホラー要素があり、恐怖感を覚えた。
しかし、これは堕胎に対する象徴シーンであったと思う。
ある程度成長してからの堕胎は、切断して取り出すことを余儀なくされる。
堕胎を選択したらその枷を一生背負い、光がない真っ暗な人生になる恐怖を表したシーンと感じた。
迷う男は恐怖でその場からすぐに逃げたかったはずだが、少年の姿を探し一緒に走った。
少年と一緒に行動することで、段々と彼の父性が芽生えていくのだ。
次に進んだ先には、通路にあった1つの扉が開いている。
その扉を覗くと、冒頭シーンの満員電車での異変をスルーした自分の姿が映し出されていた。
客観的に自分の不甲斐なさを目の当たりにした迷う男は、やはりこんな自分なんかが父親になれるわけがないと落ち込む。
父親になる覚悟
元気がない迷う男を見て、少年は手に持っていた貝殻を「お守り」と言ってプレゼントをする。
そんなとき、迷う男とある女が海辺にいる回想シーンが入る。
視線の先には海ではしゃぐ1人の子ども。
迷う男はその子どもの元へなかなか行けずにいると、子どもが駆け寄ってくる。地下通路を共にしている少年の姿だ。
回想シーンでも少年から貝殻を「お守り」とプレゼントされているため、地下通路での出来事とリンクしているのだろう。
子どもからお守りをもらった迷う男は、父親としての喜びや感動を感じる。
ある女はその姿をみて「子どもに助けられることもある。」と声をかける。
そして、海へと子どもと一緒に走っていくのだ。
これは迷う男が覚悟を決めて父親になると決断した象徴シーンだったと思われる。
本当の8番出口からの脱出
8番出口まで残り2つ。
通路を進むと突然津波が押し寄せてきた。
流されそうになりながらも必死で少年を守る迷う男。
今の日本人にとって津波とは、命に関わるような出来事だろう。
そんな状況で、自分の命を投げ売ってまでも少年を助けようとする迷う男。
完全に父親になる覚悟が表れている重要なシーンだ。
少年を抱きかかえ頭上の看板に少年を避難させると、迷う男は流されて2人は離れ離れになってしまう。
無事に助かった少年は、1人で最後の地下通路へと向かう。
異変はなくそのまま8番出口へと向かうが、最後に1度振り向き迷う男の姿を探す。
迷う男は現れなかったが、彼は絶対に脱出できる(=父親として会える)と信じて待たずに前に進んだ。
後を追うように迷う男もまた最後の地下通路へたどり着く。
異変がないことを確認し、最後の角を曲がると8番出口の文字とともに階段が現れた。
半信半疑ではあるもののそのまま改札へと進み、ある女が待っている病院へと向かうため再び満員電車へと乗り込む。
すると、8番出口に迷い込む前と全く同じ状況の場面に遭遇する。
ここでまたスルーしたら自分は到底父親になることはできない。
人間が変わるということはなかなか難しいことだ。勇気もいる。
このシーンで色んな想いを抱えている迷う男を演じるニノの演技力には脱帽した。
瞳にいっぱいの涙を貯め、どうにか自分を奮い立たせる。
父親になるか迷っていた男、8番出口をループして迷っていた男。8番出口を通して成長した結果、迷う男は迷わない男となった。迷わず自分を信じて行動へと移した。
ここで映画本編は終わってしまうが、彼はきっと困っている母子を助け立派な父親になったであろう。
電車での異変を見つけ、本当の8番出口(=父親になれるかの迷い)から脱出したのだ。
現代社会への風刺作品
このストーリは今の私たちの生活に対しての風刺が含まれているのかもしれない。
世の中は迷う男のように、苦しみながらも親になる覚悟を決める大人ばかりではない。
その結果、育児放棄や虐待などに繋がり子どもが苦しむのだ。
また、おじさんがループしているときにすれ違うJKはこう言う。
「毎日満員電車に乗って同じことの繰り返し。それならこの地下通路をループしていたほうが楽」と。
私も含めてだが今の社会ではこの当たり前に何事もなく生活できていることがいかに幸せなことか、気付くことができない日本人が多いだろう。
戦争もなく、満足な医療が受けられ、当たり前に水道から出る水が飲めて美味しいごはんが食べられる。
日々をループに感じることができるのはこれらあってのことであり、それがなければ同じ毎日で飽きただなんて贅沢を言っていられない。
日本人が平和ボケをしている象徴シーンだった。
確かに毎日同じことの繰り返しで、時には積み重ねてきた物事が一瞬で崩れ落ちてゴールが見えない状況に8番出口をループする絶望感とリンクする感情はある。
そんな中でも8番出口を見つけた迷う男のように、ループをする日々の中で希望の光を見出すことができればまた私も成長できるのだと勇気をもらった一作でした。
ゲームも気になるのでプレイしてみます!
ここまで辿り着き長々と読んでいただいた方、本当にありがとうございました。
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